そんな夢のようなワープロが かつて存在した。
それは、NECの文豪ミニ5シリーズ。
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どういう夢が見れたかというと・・・。
それは、自分の手で、ワープロをパソコンとして
使用できるようにチューニング(設定)していくという、
まるで古き良き「マイコン」のような愉しみが
味わえたことに尽きる。
reterogamerがこの愉しみに没頭したのは
1988年から1992年ごろのお話。
文豪ミニ5は、
「制御キー」と「拡張キー」を押しながら
電源を入れると ROMで用意されたCP/M が起動する。
そして、ここから新しいパソコンワールドが
開かれるわけだ!
この機能はNECからのヒミツの贈り物。
もちろんカタログにも載っていないし、NECに
聞いても教えてくれない。
※ ここで話題にしている
「文豪ミニ5シリーズ」は
初期から中期ぐらいまでの機種
(ミニ5E/G/GX/H/HL/HS/HG/HA/ぐらいまでの機種)
後期の機種はワープロとしては
機能アップしているが CPUも変わり、まるで別の
マシーンになっている。
※ CP/Mとは
Control Program for Microcomputerの略。
DOSの一種。デジタルリサーチ社製品。
8ビットCPU Intel 8080CPU用のOS.
簡単に言えば、MS-DOSやMSX-DOSみたいな
コマンドプロンプトの環境。
※ MS-DOSは 16BIT用OS
CP/Mは 8ビット用OS
CP/M86は 16ビット用
68000系だと OS/9 や CP/M-68K
<イメージキャラクターは三田寛子>
文豪ミニ5シリーズはイメージキャラクターに
三田寛子さんを起用していました。
ちなみに、PC-6001シリーズは武田哲也さんが起用されて
いたのが、今も記憶に焼きついています。
PC-8801FHの頃の斉藤由貴さんも今見ると懐かしいですね。
他に大江千里とか、NECは けっこう有名人を
イメージキャラクターに起用してましたね。
<当時の情報収集手段>
当時は、パソコン通信(BBS)で情報が交わされては
いたが、まだまだパソコン通信人口は少なく、
主な情報入手元は雑誌ということになる。
もちろん、retrogamerもパソコン通信の環境は
まだなかった。
一番、文豪についてアツク掲載されていたのは、
PCW(パソコンワールド)という雑誌でした。
<PCWと肱陽塾>
昔 PCW(ピーシーワールド)という雑誌で、
「文豪mini5」関連のパソコン化関連の記事が
連載されていて、毎回胸をときめかせたものです。
(他のパソコン用にもコアな記事がたくさん載っていました)
色々なコアなユーザが投稿してくださっていましたが、
この雑誌での文豪関連の記事の中心的存在だったのが、
肱陽塾さん(字を忘れました ちがってるかも)でした。
当時は大変、お世話になりました(笑)
肱陽塾さんは、本当に学習塾を運営していたのだけど、
文豪研究のほうにも熱心にとりくまれており、PCWにも
よく記事を提供してくださっていたようです。また、文豪の
サークル(有料でしたが、とても安価 事実上実費のみ)も
運営されていて、とてもコアな回報「文豪通信」(同人誌)を
サークルメンバーに配布してくださいました。
雑誌では紹介しきれていない情報や、打ち込むのが大変な
ダンプリストをフロッピーにて有償提供してくださったり
と大変素晴らしいサークルでした。
このディスクサービスで文豪ミニ5用の
シューティングゲームを買ったことが
あります。
ワープロなのに、エクセリオンみたいな
シューティングゲームが動く様は、やっぱり
「文豪買って良かった」と思った至福のとき(^_^)
当時としては、知る人ぞ知る衝撃でした。
もっとも、初代ゲームボーイ並に
残像拳もすごかったけど(笑)
※もっとも、ワープロ用にも市販ソフトとして
ゲームも何タイトルかリリースされていました。
文豪に限らず羅列しますが、
アドベンチャーゲームとか、倉庫番、ボンバーマン、
テトリス、ぷよぷよ 等が発売されていました。
シューティングは無かったように思います。
文章入力に疲れたときの「気分転換用」という
位置付けで、ちょっとしたゲームが多かった
というのがretrogamerの印象ですね。
肱陽塾さん
今も元気に学習塾として繁栄していることを祈っています。
<もちろん、ワープロとしても・・・>
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もちろん、ミニ5シリーズはワープロとしても優れていた。
わりとキビキビと動くし、何よりも素晴らしかったのは
「電源ONで即使用可能、いきなり電源OFFでも内容を覚えてる」
というRAMベースでのレジューム機能がしっかりしていたこと。
これは大変使い勝手が良かった。
ハンディスキャナ(オプション)も使用可能だったので、
簡易コピー機としても使用できました。
また、簡易グラフィックエディタが内臓されていたので、
スキャナで取り込んだ画像のドット単位での修正が出来たり、
自分で一からお絵かきしたりも出きたりと
なかなか楽しめました。
(もちろん、モノクロ)
グラフや表の作成が出来るなど、簡単な実務作業も
こなせた。
ちなみにretrogamerが持っていたのは文豪ミニ5H。
ディスプレイはTV画面の半分、つまり横長のタイプ。
40文字×11行表示なので、ハンドヘルド
コンピューターよりも広い画面。(ラップトップだしネ)
もちろんモノクロでバックライト無しSTN液晶。
かなりのお気に入りでした。
<パソコン購入という選択も
ありっちゃーあり だったけど>
この文豪ミニの時代は、すでにPC-98vm帝国が
築かれており、ビジネスをやりたければ、
普通にパソコンを買えばよい時代でした。
ゲームやホビーに使いたいなら、NEC製品を
選ぶのであればPC-88SRシリーズ
という選択もありました。
でも、それらのパソコンは高価。
文豪ミニ5なら、10万円ぐらいで、
ホビー&学習用パソコン、ワープロ、
グラフィックエディッタ、プリンタが
同時に入手できたのだ。
その気になればモデムを取り付けてワープロ通信も
出来た。
<文豪ミニ5でMIDIをやる夢>
さらには、 文豪mini5でMIDIによる
シンセサイザーを制御するというツワモノも
世の中にはいました。

(あくまでも、イメージ画像です)
ワープロなのに、シーケンサーになるわけ(驚)
retrogamerも、
そのころ流行の小室さんひきいる
TM-NETWORKのマネをしたかったワケ(笑)
※もちろん、CASIO SK−1やSk-2000で
「ゲ ゲ ゲ ゲ ゲ Get Wild & Tough
ってやるわけネ」
ま、TX-16Wも持ってたけど。
MIDI化の方法は、その昔
PCW(ピーシーワールド)誌にも
掲載されていたので、半田ごて片手に
Retrogamerもがんばってみたのですが、
結局は失敗しました。
すごーーく長いダンプリスト(16進数の数字の塊 マシン語)
を打ち込んだのですが、結局はシリアルポートに接続する
X1という型番のフォトカプラ(だったかなぁ)内臓の
ハードウエアの作成で失敗したみたい。
DX-27(4オペレーターFM音源シンセ)は うんともすんとも
鳴りませんでした。
結局は、夢でおわってしまった(涙)
※MIDIでシンセをつないで遊ぶ夢は数年後、
TOWNS購入により実現。
MIDIデータを作りまくりました。
<文豪ミニ5のCP/M>
文豪ミニ5はROMでCP/Mを内臓しては いたものの、
さすがにエディッタなどのユーティリティが何も無い。
そのため、比較的入手が容易だったMZ-2500用の
CP/Mのディスクを使用するとそのままソレが
使用できました。
MZ-2500用にリリースされているCP/M用の
フォートランやコボル、C言語などの
高級言語も使用可能でした。
※ 基本コマンドの正式名称は「ビルトインコマンド」
RAM(文豪はROM上かも)に存在するので高速で機能する。
以下のコマンドがある。
「DIR」「REN」 「TYPE」
(↑これらはMS-DOSとコマンドの役割は同じ)
「ERA」、「SAVE」、「USER」
※ 拡張コマンドの正式名は「トランジェントコマンド」
トランジェントコマンドはディスクに収録されている
ので、実行のたびにディスクアクセスする。
文豪の場合はRAM上に存在(だったと思う)
※ユーティリティとは、この場合、エディッタなどの
アプリケーションのこと。
<なんと、MS-DOSまで起動できた!>
文豪ミニ5シリーズはCP/Mが動き、それだけでも
パソコンとして使用できたのだが、なんと、MS-DOSも
起動できた。
そう、文豪ミニ5は 8ビットでもあり、
16ビットでもあるという変わったコンピューターなのだ。
こんな変わったコンピューターは他に類がない。(と思う)
CPUはNEC開発の8088ピン互換の上位互換CPU
「V20 (uPD70108)」8Mhzを使用。
このCPUは内部16 bitで外部8 bitデータバスという構成。
しかも、8088と8080の両方ともに互換性があったのだ。
あるときは、8ビット(エミュレーション?)として、
あるときは16ビットとして機能する!!!!
このCPUを採用したおかげで、文豪はPCの夢を見ることが
できたわけだ。
MS-DOSも有志の方々の手によって、
移植方法が公開されました。PCWにも掲載されました。
雑誌に何ページにも渡って掲載された
ダンプリストを打ち込むことによりPC-9801用の
MS-DOS2.2を動かせるようにするパッチをつくり、
実際に文豪ミニ5がパソコン化できた。
これは、retrogamerも成功!!!
題して、
「文豪mini5 V20 SYSTEM MS-DOS Ver2.2」
俗称は「熊本版」 (命名理由は忘れました)
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実際に文豪ミニ5でMS-DOSが起動したのには
メチャクチャ感動しましたね。
もちろん、PC-98専用のソフトは動かない。
この辺はHandy98とか98Ltでも同じこと。
グラフィックを使用しない、一般的なDOS汎用
プログラムの実行ならば、そのまま可能でした。
まさに、文豪ミニ5は
「DOS汎用のラップトップコンピューター」となった。
超文豪マニアな方になると、直接I/Oたたいて、
グラフィックが出るゲームとかも
造っている人もいた(驚)
もちろん、MS−C(C言語)なども動くので、
いろいろなプログラムを作成&コンパイルして、
遊んでいました。
大変、コンピューターの勉強に役立ちました。
<でも、TOWNS買っちゃった!>
ちょうどこの文豪パソコン化遊びに飽きてきたころに、
富士通 FM-TOWNSUUX(元祖CRT一体型TOWNS)を
TOWNS版の SEGAの「ギャラクシーフォース」(CRI移植)
と共に購入。
当然、タウンズに夢中になる。
<TOWNSと文豪が共存>
しかし、当時、TOWNSに
つながるプリンターを持っていなかったので、
やはり文豪はワープロとしては使い続けることになる。
※ ちなみに、驚くことに、文豪ミニ5の初期シリーズ
には、「プリンタ化インターフェイス」がオプションで
用意されていました。
なんと、NECのパソコンに文豪ミニ5をオプションボード
経由でつなぐと、パソコンのプリンターの代わりとして
使用できました。でも、Fujitsu製品であるFM-TOWNSは
NECとは文字コードやプロトコルが異なるので、
もしもこのオプションを買っても使用不可能でした。
また、retrogamerが所有していた文豪mini5h(PWP-50H)
では このオプションは使用できませんでした。
逆に、文豪ミニ5から、他のドットインパクトプリンタ
等に接続しての外部プリンター印刷も可能でした。
このようにTOWNSで使用するFDのラベルも文豪ミニ5で
作っていました。
(こういう風に、タウンズ用のFDの
ラベル作成にも活躍)
ここで、文豪ミニがMS-DOS形式フォーマットの
ディスクのテキストファイルの読み込み機能を
標準で用意していたのが すごく役にたった。
(ワープロとして起動した場合でもインポート出来た)
2HDは読み込みできないのだが、TOWNSで
フォーマットした2DDのディスクに書き込んだ
テキストファイルを文豪に取り込むことが出来た。
当時、ワープロは特殊フォーマットの機種が多かった
だけに、この辺はさすがパソコンのNEC! あっぱれ。
さらに、文豪のCP/MやMS−DOSの
エディタ上でも、TOWNSで打ち込んだテキスト
の編集が出来た。
フリーウエアで、MS-DOS上で動く
テキストのレイアウト印刷ソフトがあり、
字の大きさや改行幅なども自由に調整できたので、
TOWNSのプリンタの代用品として、
主にリストやドキュメントの印刷を中心に
1年近く重宝した。
<文豪ミニ5Hとの別れ>
こんな素晴らしくて、楽しい思い出がいっぱいの
文豪ミニ5Hも、ついにはバッテリーが持たなく
なってしまいました。
なんと、このワープロはバッテリーがなくなると
ACアダプタを差し込んでいても起動してくれないのです。
その証拠に、分解してバッテリーを引っこ抜くと
起動しません。
しばらくの間は、5分ぐらいは使用できていたのですが、
ついに、最後のときを迎えてしまいました。
電源入れて、2秒で切れる。これでは、何も出来ません。
ここで、バッテリーを交換すればよかったのかも
しれませんが、 「若気の至り」でしょうか。
TOWNS用のプリンタを購入してしまった。
ついには文豪ミニの置き場に困り、
なんと、 粗大ごみに だしてしまいました(泣)
そのときに何枚か「おもひでのディスク」も一緒に
捨てました。
さらに、もう読まないだろうということで、
「PCW」も処分。
もったいないことをしたなあぁぁ。
当時の貴重な資料が残っていないのが残念で仕方ありません。
あまりモノを捨てないretrogamerにしては
珍しいことです。
もっとも、貴重なモノでも「売却」は
頻繁にしていますが(笑)
「後悔先にたたず」
<後年、文豪ミニ7も買ってみた>
1998年ごろの話。某H店にて、
文豪ミニ7Hを980円で発見!!!
懐かしさのあまり購入してしまった。
文豪ミニ7は文豪ミニ5よりも上位機種で、当時
あこがれだったワープロです。
CPUがミニ5よりも高性能で、モノクロCRTと
高品質プリンターを備えたのが特徴のデスクトップ
ワープロ。
ミニ7シリーズはMS-DOSベースで動いていたので、
PC-98用のMS-DOSを用意して、そのディスクに
パッチを当ててやることにより、わりと簡単に
MS-DOSマシーンとして使用可能でした。
ちなみに、CP/Mは動かない。
もちろん、PC-98専用ソフトは動かない。
でも、このマシーンを手に入れてみると、想像とは
大きく違いました。
たしかに、印字品質はミニ5よりも綺麗。
全体的なスピードも早い。
でも、なんだか物足りない。
まず、「電源入れて即起動」のお手軽さが無い。
パソコンと一緒で、システムディスクから起動して、
プログラムのロードが終わってからやっと使える。
電源を切るときも、今のWINDOWSでいうシャットダウン
に相当する作業が必要。しかも、文章を打つには常に
作業用ディスクを入れておく必要がある。
まさに、ワープロに特化したパソコンそのもの。
ちょっと、想像とはちがっていた。
このワープロは弟にあげた後、弟もいつの間にか
ごみに出してしまっていた。
そういうわけで、ミニ7に関しては
さほど思い入れが無いのだ。
<NECはマニアの味方>
実は、1998年ごろに発売されていたNEC製品のPDA
MC-MKシリーズは、なんと、MS-DOSマシーンとして
も使用可能でした。
(ただし初期のM-MCシリーズのみ DOS化可能)
このPDAはいわゆる電子手帳的な製品で、
住所録、電子メール端末、FAX機能、パソコン通信、
ワープロ、表計算、スケジューラ、時計、電卓、
辞典、メモ(付箋)、などを内臓。
シリーズ名は「Mobile Gear 」で、愛称は「モバギ」。
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この本体にはモデムが内蔵されていたので、
電話回線は必要でしたが、パソコンが無くても手軽に
メール端末としても活用されていました。
実は、retrogamerも、このマシーンを所有しています。
キーボードがしっかりしていたので、どこでも
思いついたときに、思いついたことを入力する
エディタとして重宝しました。
でも、いつも持ち歩くにはちょっと大きめでした。
このころは既にWIN98マシーンを持っていましたし、
「DOS化」には、あまり熱中しませんでした。
それでも、メーカー非公式なDOSアプリの
実行を試したときは 古き良きコンピューターで
味わってきたのと同じような、
「ときめき」を感じましたね。
このように、ワープロといい、PDAといい、
昔のNECはマニア心を よく理解してくれていた
メーカーということがよくわかりますね。
<エピローグ>
文豪ミニ5は、
世界唯一のCP/MをROMで搭載して、
MS-DOSまでも動いてしまうという
すばらしくマニアックなワープロでした。
※ もちろん、普通に「ワープロ専用」として
使用している方の方が多かったのは言うまでも
無いけどね(笑)
コンピューターの学習用としても役立った
ように思います。
やはり、ミニ5の良かったところは
「無いものは自分で作る」、
「はたせるかわからない夢を追い求める」といったところでしょう。
たまに、ジャンクの文豪をみかける。
いまとなっては動くかどうかは
わからないけど、この
青春の思い出をもう一度
試してみたいものである。
<関連記事・リンク>
retrogamer以上に、活用しまくっていたようです(笑)
http://www.asahi-net.or.jp/~ZD2T-SWGC/myhomepage/bungo/bungo5.html